
1. 会議の概要
今回の会議では、株式会社H2 Innovation、インドの大学・研究機関関係者、東京大学の河野龍興教授が、グリーン水素の研究開発、エネルギー貯蔵、日印共同研究、インドでの産業化について意見交換を行いました。
特に、水素吸蔵合金、BESS(蓄電池エネルギー貯蔵システム)と水素のハイブリッドシステム、原子力廃熱を利用した水素製造が重要な議題となりました。
インド側は、日本の先進技術をインド国内に導入し、大学での実証研究から商業化・大規模生産へ発展させる意向を示しました。
2. 主な参加機関・関係者
| 日本側 | インド側 |
|---|---|
| 東京大学 河野龍興教授 | Rajalakshmi Engineering College |
| 株式会社H2 Innovation | Saveetha Engineering College |
| 株式会社FC R&D(連携先) | Gurumoorthy Chandrasekaran氏ほか |
| その他日本側関係者 | 大学教授・原子力研究者・技術者 |
インド側は今回の訪問で、FC R&D、水素ミュージアム、京浜島グリーン水素製造所などを視察したことを報告しました。
3. 河野龍興教授の研究・技術説明
① 水素吸蔵合金と蓄電技術
河野教授は、40年以上にわたる水素技術研究について説明しました。
特に、2000年に発表したランタン・マグネシウム・ニッケル系水素吸蔵合金の研究と、ニッケル水素充電池への応用を紹介しました。
水素吸蔵合金は、水素を繰り返し吸収・放出できるため、長期エネルギー貯蔵の重要技術として位置付けられています。
② BESSと水素のハイブリッドシステム
河野教授は、再生可能エネルギーの変動に対応するため、蓄電池と水素を組み合わせる重要性を説明しました。
| 技術 | 主な役割 |
|---|---|
| BESS | 短時間の電力変動調整、瞬時応答 |
| 水素発電 | 長時間・季節間のエネルギー貯蔵 |
| ハイブリッド | 短期・長期の変動に対応し、システム全体を最適化 |
河野教授は、東京での比較研究に基づき、BESS単独や水素単独よりもハイブリッド方式の経済性が高いとの見解を示しました。
③ 原子力廃熱とSOECによる水素製造
インド側の原子力研究者は、原子力発電所の廃熱を利用した大規模水素製造に強い関心を示しました。
河野教授は、高温水蒸気電解装置(SOEC)を利用することで、原子力・火力発電所の余剰熱を水素製造に活用できる可能性を説明しました。
インド側からは、政府による大規模産業化投資の可能性についても言及がありました。
4. 国際展開と技術実証
河野教授は、オーストラリアでの再生可能エネルギーによる水素製造と、水素吸蔵合金を利用したインドネシアへの水素輸送事例を紹介しました。
また、太陽光発電、BESS、水素製造・貯蔵、燃料電池を組み合わせた地域マイクログリッド構想について説明しました。
将来的には、地域内で電力・熱・水素を融通し合うエネルギーインフラの構築を目指しています。
5. インド側からの主な質問
- 経済性:インドではBESSの方が安価との指摘があり、河野教授は日本での比較結果を説明しました。
- 温度条件:インドの40〜42℃に達する高温環境への対応について、水素吸蔵合金の材料組成による調整が議論されました。
- 水資源:海水淡水化、下水再生水の利用と水素製造コストへの影響について意見交換しました。
- 安全性:蓄電池の過熱・過充電リスク、水素貯蔵システムの安全性が議論されました。
- 長期貯蔵:蓄電池の自己放電と水素の長期貯蔵能力の違いについて説明がありました。
なお、会議中に示された水素のコスト優位性、安全性、水質条件などの数値・見解については、実際の導入条件に応じて追加検証が必要です。
6. H2 Innovationにとっての事業機会
今回の会議から、次の4分野で日印連携の可能性が見えてきました。
① 大学共同研究
インドの大学に小規模水素実証ラボを設置し、技術者育成と共同研究を推進することが考えられます。
② 商業化・製造
日本の水素関連技術をインド市場向けに適応させ、現地製造・産業化を検討します。
③ ハイブリッド電源
太陽光・BESS・水素発電を組み合わせ、工場やデータセンター向けの長時間電力供給を検討します。
④ 大規模水素製造
SOECと原子力廃熱の組み合わせについて、インド政府・研究機関との協力を検討します。
これらは会議内容から考えられる事業機会であり、正式な共同事業や投資が決定したものではありません。
7. 総括
今回の会議は、日本の先進的な水素技術と、インドの大学研究力・技術者人材・巨大市場を結び付ける重要な意見交換となりました。
特に、河野龍興教授の水素吸蔵合金技術とBESS・水素ハイブリッド技術は、H2 Innovationが目指す長時間・安定電力供給システムとの技術的な接点があります。
今後は、大学共同研究の具体化、インドにおける実証設備の導入、経済性・安全性の検証を進めることが重要と考えられます。
最終的には、日本で培われた水素技術をインドで実証・産業化し、世界市場へ展開することを長期的な方向性として見据えています。